デート

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デート

朝の光の中で見た香港もまた美しかった。 Heartsで夜を明かした私は、三階の衣装部屋のソファに寝かせてもらった。彼の部屋の玄関に置いて来てしまったトランクには着替えと下着が入っていたけれど、今更戻るのは嫌だったから、元の服に着替えた。トランクがあることによって、ちょっとは反省でもしてくれればいい。 衣装部屋には鍵がついているから大丈夫だとSKYは言って、店のオーナー夫婦には親戚が旅行に来たんだけれど、盗難に遭って困っているのだと説明してくれた。ホテルの部屋さえとっていなかった私は助かったという訳で。躍り疲れていたから目覚めた時はもうお昼近かった。 受付で開店準備をしていたオーナー夫婦にお礼を言って、店の外に出るとそこに煙草を吸っているSKYがいた。目深に被った鮮やかなブルーのキャップが夏の日差しに映えて綺麗だと思った。 店の前に迎えに来てくれたらしい。 私がいつ起きるかもわからないのに、ずっと。 SKYと街を歩くことにした。 もうきっと来ることはないだろう香港の街は、昨日とはうって変わって青空の下で活気に溢れていた。
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