デート

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気が付いたら、スターフェリーの船着き場に着いていた。船はもう出発する手間だった。急いでチケットを買って乗り込み、急かされるように船内へと歩いた。 天気がいいから今日は観光客が多く乗船していた。 その波に沿って二階席へと上がる。風にスカートがはためいた時、目の前の海に何かが横切って、それは引き寄せられるように船体に近寄って私の目の前に飛ばされて来た。見覚えのある青くて鮮やかなキャップ。気が付くと手を伸ばしていた。 「おーい!」 見ると、髪を乱しながら遠ざかる船に向かって誰かが走って来る。 SKYだった。 まさか、追いかけてきたの…? 今、手元にあるキャップがその証拠だ。 もし、これを手放してしまったら、 もう二度と、彼とは話せない気がした。 これで、本当のサヨナラになるの? サヨナラ、SKY。 サヨナラ、彼。 サヨナラ、香港。 一度目の夏は楽しかった香港。 二度目の夏は泣いてばかりいた香港。 私は帽子をSKYの方に思いっきり投げようとした時、 その帽子の裏面に何かが縫い付けられているのに気が付いた。 風にあおられて剥き出しになりかけている白い布のようなもの。ほどけそうなそれに触るとその布きれはたやすく中から取れて出てきてしまった。
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