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「ねぇ、SKY。
私ね、香港に来たのは初めてじゃないの。
SKYが連れて行ってくれた場所は
別れたばかりのカレと来た場所ばかりで
いろいろ想い出して勝手に辛くなってた。
嘘ついて、本当にごめんなさい」
SKYが顔を上げた。
私はありがとう、さよならと言って背を向けた。
歩き出そうとした私の頭にSKYが
キャップを被せた。
驚いて振り返った私にSKYは青空のような、
そして少年の様に晴れやかな笑みを浮かべる。
「デート、もう一度、やり直そう。
今度は俺の親父を見つけてくれたお礼させてよ」
SKYは私の目の前でパンっと手を合わせた。
「お願い!えっと…」
「名前は教えない」
「教えてくれなくていいからもう一度だけチャンスをくれよ。これじゃ俺、お前の傷に塩塗っただけのトンチンカンな野郎になっちまう」
「でも、いいの…?」
「ああ、もちろん!」
「じゃ」
嬉しそうにまだ手を合わせたままのSKYの手を強引に取って私は頭上を指さした。
「まだ、行ってないところ、あったの。
付き合ってくれる?」
指さした先にはビクトリア・ピークが見えた。香港の夜景を眼下に眺められる山で頂上の展望台まで行くピークトラムという赤い車体のケーブルカーが走る観光スポットだ。前に滞在した時には悪天候で運休していた。
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