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「でも、まだ夜には早くね?」
「じゃ、暗くなるまで、SKYのいきつけのとこに案内して?有名なところはもう知ってるから知らなそうなとこ」
「そんなんでいいのか?」
「それがいいんだよ。その方がなんか、
《知り合い》ぽくていい」
SKYはそれもそうだなと笑ってくれた。
「じゃ、これからのデート気に入って、
俺のこと知り合い以上にしたくなったら、
名前教えろよな」
悪戯そうに笑いながら歩き出したSKYに青色のキャップを返して、私達はSKYの案内する街を楽しんだ。
知らない場所ばかりで楽しかった。
最後にはちゃんとビクトリア・ピークからの夜景も眺めた。
そして四日目。香港を経つ空港に
SKYとヒロが見送りに来てくれた。
私は用意していた紙切れを折り畳んで、
SKYの被るキャップの下に挟んだ。
「私が見えなくなったら開いてね」
私を乗せた飛行機が日本へと離陸した後、
SKYはそっと紙を開いた。
私の名前とメールアドレスを見て、
SKYは恥ずかしそうに青色のキャップを
目深に被った。その口元は少年のように
上向いていた。
「またな、舞」
私の名を呟いたSKYに
ニヤニヤとメモを取り上げたヒロがからかう。
「おっ、連絡先、ゲット!」
「あ、返せよ」
ヒロからメモを取り返しまた帽子に挟んだSKYは
満足そうな顔でヒロと肩を組む。
「さ、仕事行くぞ」
それからの私とSKYは海を超えて
いろんなことを話した。
あれからなかなか直接会えない日々が続いている。
でも部屋で彼が教えてくれる心踊る様なクラブミュージックを聴きながらいつか会えたら今度はどんなデートをしようか、なんて話すのがとても楽しい。この気持ちはなんだろうねって昨日SKYに聞いたら、なんだろうなとオンライン通話画面の向こうで彼はニヤリと笑った。少年のように晴れやかな顔だった。
その笑顔に自然と幸せな気持ちになる。
今度会えたら、この気持ちの理由が
わかるかもしれないな。
幸せな気持ちのまま、私はまたねと通話を切り、
ベッドに入る。
明日は五時に起床だ。
起こしてくれるのはSKYの奏でるビート。
一発で目が覚める、魔法のサウンド。
また明日から日常が始まる。
そんな日常が
私はけっこう気に入っている。
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