船上にて

2/4
32人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
視界が甲板に迫った時だ。日焼けした男の腕が伸びてきて、私をぐいと立たせてくれた。 白い半袖シャツのボタンを上まで留め、黒いハーフパンツに同色のスポーツサンダルを履き、鮮やかなブルーのキャップを目深に被ったすらりとした背格好の男で、ライトの加減で顔はよく見えない。彼は握っていた手を離し、狙っていた一番端の席へと歩いて行くとそこに座ってしまった。 「あの、ありがとうございます」 声をかけたけれど、返事は無くて。 まぁ、バランスを崩した私が悪いから仕方ないな、と反省しながら側の席に倒れ込むように座った。 座席は白い正方形で真ん中に星印がついている。 スターフェリーの星のシンボルを表しているのだろうと眺めた。座った席は船体の真ん中だった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!