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さっきの酔いが急激に回り、足元がふらつく。
けれどそれも楽しい。
もっともっと身体を動かして、
何もかも忘れて――――
それから私に声をかけてきた女性とその恋人だという彼と飽きるまで踊った。意気投合した私達は、思い思いのカクテルを頼み浴びる程に飲んだ。気が付いたら、私はフロアの波に弾き出されて隅っこのバルコニーに一人、佇んでいた。
雨はいつの間にか止んでいた。
目の前にはフェリーで渡って来たビクトリアハーバーと対岸の夜景。こちらからの眺めも美しい。スターフェリーはもう運行を終えてしまったのか、見えなかった。
「楽しんでる?」
振り向くと、すぐ隣にSKYがいた。
手にはカクテルグラスを持っていて、
それを私に差し出す。
「これ、この店で一番出るやつ」
そう言って、柔らかく笑った彼にときめいてしまうのは、失恋したばかりだというのにおかしい。
きっとひどく酔っているせいだ。
へべれけの私にそれでも酒を飲ませようとするSKYは意地悪だと思いつつも喉に流し込んだ。
…何の味もしない。
「これ、水じゃない」
SKYはおかしそうに笑っている。
騙されたと頬を膨らました私は軽い気持ちで彼の胸元を叩いてしまったら彼は顔を歪めて急に苦しそうに胸を抑える。
「あっ、ごめん…」
彼はさらに苦しそうにそこに膝をついてしまった。
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