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俺の服は未だに洗濯機の中を巡回している。外に食べにいこうにも、来ていく服がないため外に食べにはいけない。目のやり場に困るため、とりあえず彼女に服を着てくれと懇願したものの、Tシャツとタオル地のホットパンツという下着とさして変わらぬ露出度の服装に着替えられた時には撃沈した。
彼女のルームウェアだというのだが、すらりと伸びた綺麗な白い足がとにかくヤバい。脚フェチだったのかと自分でも動揺してしまうほどには、目の保養だ。
視線をさまよわせて誤魔化したものの、次に覚えた羞恥は自身がパンツ一丁なことである。しかし、自分が細身の彼女の服など着れるわけもない。それでもどうにかならないかと苦し紛れに服を要求すると、彼女はタレた目を細め、ほにゃっとした気の抜ける口調で言った。
「父の服ならあるけどぉ……サイズ合うなぁ?」
「延びたら後で買って返すからとりあえず、男性モノがあるなら貸してくれ……いたたまれん」
「はぁ~い」
そう言って彼女が持ってきてくれた服は、男物ではあったものの、自分にはいささか小さい。
伸びるTシャツに謝りながら袖を通し、悲鳴を上げそうな短パンに足を入れる。
「……」
「……ありゃりゃ、前、しまんないねぇ?」
知ってる! 実況するな!
腹の部分でつっかえているファスナーをじっと見つめないでほしい。そこは男の大切なところである。
「……お前の親父、細いんだな」
「うーん、足が入っただけでも奇跡!」
「やかましいわ!」
「あれ? フォローしたのにぃ」
フォローになってねぇんだよ……。
たぶん余裕のある短パンだったから救われたものの、太ももはパツパツ。結局、ファスナーを開けたままという微妙に居た堪れない格好に落ち着く。
「父が履いた時はぶっかぶかだったんだけどなぁ。ぴちぴちだねぇ」
「お前……無意識の悪意口に出さなきゃだめなの? 死ぬの?」
「えー? 死なないけど、思った事言っちゃった。ごみーん」
だからコイツ嫌いなんだ!
半泣きになりながらも彼女がカラカラと笑いながら指定してきた場所に座る。彼女はそのまま朝ごはんを作りにキッチンへ向かいながらもこちらを見ずに言葉を投げかけてきた。
「おにぎりでいーい?」
と尋ねてくる彼女に、俺は思わず顔を上げて。
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