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ではイケメンかと問えば即答で「図に乗るな」と言われる次第だ。
髪は一度も染めたことはない短髪で、放っておけば髭も生える。彼女が居座る足にもちゃんとスネ毛だって生えている。
胸は女性から羨ましがられた事があるくらいはそこそこ垂れているし、腹は胸に負けず劣らず球体である。信楽焼きのタヌキを思い浮かべることが出来たならば、おおよそ同じ体型だとわかっていただけると思う。運動を忘れた成人男性の体型なんざそんなものだ。
そんな丸い腹の上で、ト●ロとメイちゃんよろしく、スピスピと寝息を立てた女性が存在するのだ。
腹に乗る彼女の頬は柔らかく、かかる寝息は温かい。向こう側に投げ出された白く伸びた足も、腹に添えられた掌も女性のしなやかさを携えて。艶めかしい下着から少しだけ零れる胸のふくらみは、うつぶせになっていることによって――。
――まて。まてまてまてまて! ちょっとまて! どうしてこうなってる?!
目の前にある性に支配されそうな煩悩を拭うべく、自分の状況を再度見直そうと思考を無理矢理遡らせていく。
昨日、俺は何をした。
というか、彼女に無体を働いてしまったのか。
本当に思い出せない。
自分の高鳴る心音なのか、早まる呼吸のせいなのか、腹の上で寝ていた彼女が身じろぎした事に思わず息を止めた。
目を覚ました彼女の動作は、彼女のしゃべり方同様、ゆっくりとしたものだった。
静かに顔を上げると同時に長い睫毛がパタパタと小刻みに動く。寝ぼけ眼に視線がかち合ったかと思えば、彼女は見たこともないほどふにゃりと笑って。
一瞬、その瞳の美しさに言葉を失った。
光の当たり具合なのか何なのか、間近で彼女を見たのが初めてだったから気づいただけなのかもしれないが。
キラリ、キラリとまばゆいオパールのような虹色のきらめきが瞬いて。
「――うはぁ……きれぇ……らぴすらずりぃ……」
「は?」
……らぴ? なんだそれ?
とにかく寝ぼけているとは理解できたために、思わず声をあげると、彼女はまたシパシパと瞬いてからトランポリンかのように俺の腹にもう一度顔を埋めて。
「きもちぃ~……」
「腹の上でしゃべんな! くすぐったいわっ!!」
人の腹を何だと思ってんだ、このアマァ!
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