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俺の家がわからないから彼女の家に連れてこられたらしいのだが、よく百キロ間近の男を連れてこられたな、と思っていたら彼女は膨れた顔を作ったまま俺の思考を読んだかのように呟いた。
「フラフラだけれど自分の足でちゃんと歩いてたよぅ……呂律は回ってなかったけど……」
「……すまん」
ところで、そろそろ下着姿やめてほしいんだが。
視界に入る彼女の姿は目に毒だ。
彼女の家なのになぜ彼女は服を着ていないのだと苛立ってしまう。第一、俺の前で下着姿でいるということは、俺に襲われる心配なんてこれっぽっちもしていないというわけで。
むしろ、異性として扱われていないからこそその姿でいられるんだろうな、と考えてしまうと苛立ちよりも落ち込む気持ちも膨らんでくる。
嫌いな女からさえ異性対象としてみられていないんだから、彼女なんて当然できるはずもない。
学生時代に付き合った女性は何人かいたが、それも周囲の雰囲気に流されて、周囲が恋人だらけだったから、という自分の気持ちにそぐわない付き合いだったため、すぐに別れてしまったのだが。
「というわけで、お腹ぷりぃず」
「どういうわけでそっちにいったんだ。腹を求めるな、腹を」
「片山さんのお腹、気持ちいッスぅ」
「ごめん、ほんっと意味わかんない」
会話しよう? ね? お願いだから。
しばらく意味の分からん押し問答が続いたが、彼女は急にピタリと動きを止めて、自分のお腹をさすると、またふにゃっと力なく顔をだらけさせて。
「おなかすいたぁ」
「……お前、ほんと自由だね」
彼女の中で、優先事項が入れ替わり、とりあえず飯になったらしい。
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