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2.白紙のカルテ
翌日の昼過ぎ。
午前診が終わり、十二時から十六時までのお昼休憩中、クリニックの電話は自動的に留守番電話に切り替わる。
その直前にかかってきた電話に出た渡辺さんは、小声で「はい、はい」と答えながらの怪訝な表情だった。何かを思い出そうとしているかのように、視線が宙を彷徨っている。
二、三分話したあと、彼女は「かけなおします」と言って受話器を置き、パソコンのキーボードを叩いた。カルテは紙だが、受診歴だけはパソコンに記録が残っており、すぐに調べることができる。
渡辺さんは私を手招きし、「五年前に受診ラストの斉藤さんという方が亡くなったみたいで――」と言った。
「覚えている人ですか?」
「それが、記憶にないんですよね。よく覚えてないなあ――今の電話、警察からだったんですけど、当時の病状を知りたいらしいので、カルテを探してきてもらえませんか。私、先生に報告してきますので」
看護師は所謂ドーナツ勤務で、十二時から十六時は本当なら勤務時間外。でも私は特に用事もないので、カルテ探しを引き受けて、カルテ庫へと向かった。
でも、私はその患者のカルテを見つけることができなかった。
――代わりに、昨日見つけたほかにも、白紙のカルテを何冊か見つけた。
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