1.再会

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1.再会

この日は何もかもがうまくいかなかった。だから何となくいつもと違うことをしてみようと思い、意外にも初めての終電に乗った。本を読んでいると、派手な格好をして急いで歩いてくる女性に足を踏まれた。 「痛っ!あの人、足を踏んだのに何も言わない。失礼な人だな」 そう思いながらも続けて僕は本を読む。だが、なぜかさっきの女性が気になって本を閉じ、目で追いかけてみると、何者かがその女性のお尻を触っているではないか。 「もしかしてあれって…気付いてるの俺だけ?どうしよう。でも何か言わなきゃ」 僕は意を決して、その女性に声をかけた。 「あの、場所替わりましょうか?」 女性は最初僕を睨み付けたが、サングラスを外して言った。   「たくちゃん?」 それは、紛れもなく日本にいるはずのない幼馴染みの声だった。 「さな…なのか?」 ——気付いたら僕は彼女の手を引き電車を降りていた。ドアが閉まり、走って行く電車を見送った彼女は僕を見て固まっている。 「ごめん。さなが日本にいることにびっくりしちゃって勢いで降りちゃった。でも終電降りちゃったら帰られないよな」 「あの…さっきからついて来てたのって、たくちゃんだったの?」 「ん?俺はずっと本を読んでたよ」 「お尻触って声かけたとかじゃないの?」 「はぁ!?それは俺じゃないよ!俺はただ、痴漢に気付いたから声をかけただけだよ」 「そうだったんだ。疑っちゃってごめんなさい。っていうか、ありがとう…」 「お、おう。っていうか、なんで日本にいるんだ?帰って来てたなら連絡ぐらいしろよ」 「ごめんね。連絡できなかった理由は色々あって…。それより、終電行っちゃったからここからどうやって帰る?」 「歩くしかないかなって思ってる」 「歩ける距離なの?私はあと4駅もあるからタクシーじゃないと無理だよ」 「そっか。4駅は歩くには遠いね。夜道危ないし一緒にタクシーを探そうか」 「助かります。ありがとう」 キュッキュッ 誰かの靴の音。すぐ後ろにいる気配を感じる。 振り向くと、電車の時刻表の後ろからスーツを着てスニーカーを履いている男性の足が見え、すぐにさっきの痴漢だと察した。 咄嗟に彼女の腕を掴み、自分でも信じられない速さで走った。 「ちょっと!いきなり走ってどうしたの?」 「ついてきてる」 「え?」  
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