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長きにわたり、ジルヴァラは従属国出身の王妃の聖獣により守られてきた。
国にとって重要な王妃は、従属国の中から順番に選ばれる。
五つの国の中で争いが起こらないよう、古くからそう決まっていた。
従属国の国王は多くの妻と娶り、いつでも王女を差し出せるようにしている。
雪の国スニューウでは、百三十年ぶりに王女を輿入れさせるよう命じられた。
選ばれた姫は十歳になると、ジルヴァラへ渡って花嫁修業を行う。
数年かけて、聖獣召喚について学ぶのだ。
スニューウ国は第一王女マリエッタを、ジルヴァラ国の未来の王妃とするために差し出した。
十歳のあどけない少女は、侍女のひとりも付けられずに輿入れした。
厳しいことも、辛いことも、悔しいこともあるだろう。
けれども、何があっても耐えなさい。
父王より言葉を託され、マリエッタはジルヴァラ国にひとりでやってきた。
覚悟も、自分の重要さも、よくわからない年齢である。
まだ、十歳だ。
だから、王太子ユウェルに魔法が使えないことを非難され、魔法の塔へ閉じ込められてしまったことも、よくわかっていなかった。
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