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第一章 雪の国の王女は、銀の国に輿入れする
「何、魔法が使えない娘だと!? ありえん! 魔法の塔に、閉じ込めておけ!」
王太子ユウェルが、美しい顔を歪ませながら叫ぶ。
まるで軽蔑するような、酷く冷たい声が響き渡る。
雪の国の王女マリエッタは、呆然と美貌の王子を見上げていた。
侍女らが、マリエッタの背中を押す。
行き着く先は、囚人を収容するような高い高い塔だった。
マリエッタ・フォン・シュノーベル――十歳。
彼女は輿入れしてきた当日に、魔法の塔に閉じ込められてしまう。
◇◇◇
銀の国と呼ばれる大国〝ジルヴァラ〟の周囲には、五つの従属国があった。
雷鳴響く国〝オンウィア〟。
風吹く国〝ウイント〟。
水が豊富な国〝ワーテゥル〟。
海に囲まれた国〝ゼー〟。
雪深い国〝スニューウ〟。
五つの国々は自治権を得る代わりに、ジルヴァラ国を守るよう命じられている。
戦争となったときに兵を挙げてジルヴァラを守ることはもちろんのこと。それ以外に、国を守護する聖獣を王妃として選ばれた姫君が召喚するのだ。
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