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お茶をかけたのだっていまになれば冷や汗ものなのに、さらになにか気に障ることを言ったりしたくない。
まあ、この様子だと彼はそれを笑い飛ばしそうだけど。
「お付き合いしていらっしゃる方がいるのですか」
「い、いないですね」
いたら諦めてくれたのか!
と三ヶ月前、シロネコ宅配便のお兄さんを振ったのを後悔した。
「それとも、心に決めた方がいる、とか」
「そ、それも、……いない、です」
幼きあの日、憧れだった近所のお兄さんは先月、結婚した。
とはいえ、ただの憧れだったんだけど。
「じゃあ、なんの問題もないです」
御曹司が満足げに頷く。
ないどころか問題だらけじゃー!
なんて叫ばなかった私は偉い。
偉いからあとで、コンビニスイーツを買ってあげよう。
「あ、あの。
私、仕事があって」
これは正直な気持ちだ。
父の工房に間借りという形とはいえ、自分の工房を春に立ち上げた。
まだまだ手探り段階ではじまったばかりなのだ。
なのに辞めてこいとか言われたらお断りだ。
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