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それに私の意思を尊重してくれるのならば、結婚は諦めてくれるはず。
「ああ。
続けてもらってけっこうですよ」
「なら、結婚は……」
……諦めてくれるんだ。
なんて、ほっとしたのは一瞬だった。
だって、若旦那の答えは私の予想の斜め上をいくものだったから。
「私が東京と金沢、二重生活をします。
店に立つ日は東京。
休みの日は金沢。
東京から金沢まで新幹線で一本、二時間半もあれば着きますからね、可能です。
それにリモートワークもできますから」
さらりと言ってのけ、茶碗に残っていた最後のひとくちを飲む。
……詰んだな。
若旦那の辞書には諦めるという字がないらしい。
かくなるうえははっきりと、結婚したくないと言うしかないのか。
「そんなに私と結婚するのは嫌ですか」
茶碗を座卓へ戻し、若旦那が姿勢を正す。
レンズの向こうからは真っ直ぐに澄んだ瞳が見ていて、私の姿勢も伸びた。
「嫌です」
「理由を訊いても?」
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