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若旦那はそれで決定だという口ぶりだけど、まずはお試し交際から、じゃないのか?
それで断るかもしれないのに?
「帰ったらその日程で話を詰めておきます。
私は絶対に、貴方を妻にしますから」
自信満々に若旦那が笑い、私の口からははぁーっと重いため息が落ちていった。
結局、うちと三橋呉服店手の取り引きの話はまた今度、ということで若旦那たちは帰っていった。
「……鹿乃子。
結婚、するのか」
あれのどこでそうなるのかわからないが、父はがっくりと肩を落としている。
祖父と祖母は今日、協会の旅行でいなくてよかった。
いまだに孫が可愛くて仕方ない祖父などあの場にいたら、若旦那を恫喝しかねない。
「まだしないよ。
だって仕事、はじめたばかりだし」
「でもな……」
父としてはもしかしたら、仕事を辞めさせるいい機会だと思っているのかもしれない。
私が工房を立ち上げたとき、反対されたから。
大学卒業後は一般企業に就職しろと父に強く勧められた。
絶対に跡を継ごうなどと考えるな、と。
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