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祖父から手取り足取り、初めてハンカチを染めたときの感動はいまでも忘れられない。
初恋が実らずに落ち込む私へ、簡単な型染めを手伝わせて無心に作業をさせた父は、もしかしたら励ましてくれたのかもしれない。
灯りのない工房はまるでブラックホールのようで、そんな温かい思い出すら全部吸い取って無くなってしまうんじゃないかと思った。
「おうっ、帰ったの……どうした?」
振り返った私を、父は怪訝そうに見ている。
「……継ぐ」
「は?」
「工房、私が継ぐから!」
「はぁーっ!?」
私の宣言で父は、喜んでいいやら怒るべきなのか複雑な顔をしていた。
そこからはもう、本当に揉めに揉めた。
親としては私に苦労させたくないのはわかる。
けれどこれで、私の思い出が、それまで続いてきたこの家の歴史が終わってしまうようで、嫌だった。
「お前が一人前になる頃には、着物を着る人なんていなくなってるわ!」
父の主張はわかる。
でもそれならば。
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