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「はっ……!
有坂様、このたびは大変な無礼を働いてしまい、申し訳ございませんでした……!」
土下座の姿勢のまま方向転換し、男がカーペットへと額を擦りつける。
「本当に申し訳ございませんでした。
私からもお詫び申し上げます」
ただ、あたまを下げただけなのに、若旦那のそれは、ほぅと感嘆のため息が漏れそうなほど美しい。
「あっ、いえ!
あたまをお上げになってください!
こちらこそ、うちのバカ娘がお茶をかけるなどしてしまいまして、申し訳ありません!」
ぎろっ、と眼光鋭く父から睨まれ、思わず出そうになった悲鳴は飲み込んだ。
「すみません、やり過ぎました。
申し訳ございませんでした」
素直に、あたまを下げる。
さすがにここまできて多少あたまも冷えると、お茶をぶっかけるのはやり過ぎだったと反省した。
「お許しいただけるのですか」
若旦那があたまを上げる。
男もソファーへ座り直し、騒ぎを聞きつけて母が持ってきてくれたタオルであたまを拭いていた。
幸い、夏で冷茶だったので、火傷の心配はない。
いや、だからかけたっていうのもあるけど。
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