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「ええ、はい。
それは。
こちらも悪かったですし」
しっし、と父に手で追い払われ、出ていこうとしたものの。
「では、というわけでもないですが。
……そこのお嬢さん、私の妻におなりなさい」
「……は?」
言った本人を除く残り三人、仲良く同じ一音を発して固まった。
「……。
わ、若旦那!
ご冗談を!」
三人の中で一番早く我に返ったのは、三橋の男だった。
「冗談など言っていません。
だいたい、父も、宅間さんだって、私に早く結婚しろとうるさいじゃないですか」
涼しい顔で若旦那はお茶を飲んでいるが、私はいまだに状況が理解できない。
「けれどそれは、しかるべきお嬢さんと、という話で」
「ほら宅間さん。
また貴方は有坂さんを下に見るのですか?
有坂のお嬢さんでは私の結婚相手には不足だとか」
「うっ」
さっきはごときなどと言われてあたまに血が上ったが、さすがにこれは宅間さん、だっけ?の言うことが正しいと私も思う。
「お嬢さんはいかがですか?
私の妻になるのは」
「へっ?」
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