第1章 私の妻におなりなさい

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自分のことなのにまるで他人事のように傍観していたところへ話を振られ、思わず変な声が出た。 「え、えーっと。 さすがに、会って数分の方といきなり結婚はないと思います……」 うんうん、私の知っている若旦那の情報はその見た目と、礼儀正しい、いい人そうだ、っていうのだけだ。 それだけで結婚なんて無理。 「そうですか? 昔は初めて会ったその日に祝言、なんて珍しくもなかったですが」 「あの。 でももう、令和ですし……」 「それがどうかしましたか。 私は貴方が気に入ったんです。 私の妻におなりなさい」 これで諦めてくれ! と思ったのに、若旦那はなおも食い下がってくる。 父はいきなり出てきた私の結婚なんて話が受け入れられないのか、まだ呆けていて戦力になりそうにない。 「いや、なんで気に入ったのか訊いてもいいですか」 まあ、相手はあの三橋の若旦那、しかも見た目もよくて人としてまともそう、ならば悪条件じゃないかもしれない。 しかしながらこの何分かのこのやりとりのどこで、私を気に入ったのか全く理解ができない。
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