最後の桜

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最後の桜

桜。 新しい始まりを告げるように、満開に咲いている。 この季節は、実は、楽しみがある。 時は、3月下旬。 鼻歌を歌って、足取り軽やかに、人気のない林道を歩くと、小さな神社がある。 入ると、もっと奥へ足を進める。 「あった…」 今年、中学校を卒業した少年 明里湊(あかさと みなと)。 4月から高校生になる。 「おーい。いるかー?」 誰も居ないのに、誰かを探している。 「今年は、いないのか」 『ミナト、来てくれたの?』 澄んだ声が、雨のように上から聞こえる。 「いた。また、来たよ!」 桜の花の間から覗き込むように、湊を見る。 『今年も、いっぱい咲いたよ!』 近くに寄るため、木の上に登った。 「そうだね」 名前は、桜花(おうか) 元人間の、桜の妖精に近い妖怪だ。
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