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いくらここが通学路そばの公園だからと言って、女子高生がうろついていい時間ではない。
桜子は大輔から目をそらし、桜を仰ぎ見る。揺れる黒髪に月影がさした。
「夢を見たんです」
「夢?」
生徒の言葉をバカみたいに復唱する。
「何度も見る夢です。愛する人と別れる夢。とても胸がいたい」
「寝覚めが悪くて、ここで踊っていたのか?」
いくら悪夢を見ても、ここで踊る意味がわからない。普通の女子高生ならば。
「だめですか?」
それだけをいい、桜子は身をひるがえし、出口へ向かってかけていった。
その後ろ姿を目で追い、胸の内でつぶやいた。
――おまえは、あの夢の白拍子なのか。
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