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渉くんの部屋で2人きりになったときに、私は渉くんに聞いた。
「渉くん、ホントは美月さんことが好きなんでしょ?」
「いや、僕が好きなのは美紀だけだよ」
と言って、キスをした。なぜだろう。そのキスで、確信した。カレハ、ワタシノコトナンカスキデモナンデモナイ。
でも、まだそのときは思っていた。いつか、いつか、渉くんの気持ちを私に向けられると。
その日は、そのあと、なんと言うこともない話をして別れた。駅まで送って行ってもらったあと、私はとんぼ返りして、美月さんの家のチャイムを鳴らしていた。
「はい?」
「お話があります。渉くんのことで」
「今開けます」
美月さんの顔が緊張していた。
「渉がどうかしたの?」
「渉くんとキスしました」
「・・・付き合ってるんだもの、キスくらいするでしょう?」
私は、見逃さなかった。美月さんの苦しそうな顔を。
「なんで、信也さんと付き合ってるんですか?」
「渉が、『いいやつだから、つきあってやれよ』って紹介してくれたの。渉の紹介なら、間違いないかな、って」
「で、信也さんを愛してるんですか?」
ひと呼吸置いたあと、美月さんは答えた。
「いい人だと思う」
「答えになってません。あなたが本当に好きなのは渉くんじゃないんですか?」
「・・・そんなはずないじゃない。兄妹みたいなものよ」
うそだ。そのセリフを口にするときの戸惑いを私は見逃さなかった。
「・・・分かりました」
私は、心がギシギシ言うのを感じていた。
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