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『なんだそりゃ!つかデクスターって誰だよ、ここニッポンだぞー!ガイジン?ガイジンなの?ヒデキなんて名前のくせにー!』
『嘘つくとどうなっちゃうわけー?世界が滅ぶとかになっちゃうわけでちゅかぁ?ねえねえヒデキちゃん教えてくだちゃーい!』
『ぎゃははははは!』
『嘘じゃないよ、僕嘘つかないもん!魔法の力で、本当に大変なことになっちゃうんだよ!絶対ダメなんだよ!』
『ひゃははははははムキになってやがんの、マジかよ腹いってぇ!』
少年たちの、悪意に満ちた笑い声が響く、響く、響く。
俺はと言えば、そのからかい方が気分悪いと思いつつも――同じだけあっけに取られてもいたのだ。いくらなんでも、家柄のせいにしようとは。しかも、デクスターって、なんで露骨に外国人の名前なのだろう。日本にいるのだから、ナントカ権座衛門、とかにでもしておけば信憑性が増したというのに。しかも、魔法の力ときた。そんなもの、現実の世の中に存在しないということくらい、小学生だった俺にだってわかっていたことだ。
アニメやマンガの読みすぎで、そういう妄想に取りつかれてしまったのだろうか。あるいは、それくらい強く両親が彼を洗脳したのか。悪ガキたちは、前者だと思ったようだった。
『大変なことになるっていうなら、嘘ついてみろよー!ほらほら、何でもいいから言ってみ?何も起こらないって笑ってやっからよー!』
その悪ガキ集団のリーダー的立場だった男子が、ゲラゲラ笑いながらそう挑発した。完全に、ヒデキの言葉は嘘か妄想だと決めつけているような様子だった。ヒデキも、だんだん頭に血が上ってきたのだろう。最初は“絶対に言っちゃいけない”“僕は嘘吐きになりたくない”と拒んでいた彼も、自分のことばかりか家のことまで馬鹿にする彼に堪忍袋の緒が切れてしまったようだった。
そして、ついに。
『森君なんかっ……』
本人にも、きっと悪意はなかった。きっと売り言葉に買い言葉だったのだ。
『森君なんか、事故で歩けなくなっちゃうんだから!』
『はあ?なんだそれ、それが嘘かよー!』
森、というのがそのリーダー格の悪ガキの苗字だった。このクラスに森という苗字は一人しかいなかったことも追記しておく。
泣きながらヒデキは叫んだが、その場では何も起こらず。結局、ヒデキは集団に馬鹿にされて笑われて大泣きしていた。先生が来て泣いているヒデキに気づき、少年たちは思いっきり説教されていたが大して反省している様子も見られなかった。
それで、どうなったかといえば。
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