第9章~動揺~

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第9章~動揺~

「今日だけ付き合うか?俺達」 肩にのせていた手を振り払った。 「それはない!絶対ないから」 「はいはーい」 川村くんは、サッと花火を片付けに行ってしまった。 (なんなの?なんなの?完全にからかわれてるよね、あたし) 「アサミ、こっちの片付け手伝って」 花火の残害を広い集めて、あつしくんちに戻った。 帰り道は、男子と女子に別れて。 「夏って感じだよなー」 「やっぱ花火っしょ!」 「カンパーイ!」 (お酒飲んでるよー、この人達!) 「ねぇねぇ、酔っぱらわないの?大丈夫なの?」 「酔っぱらって、アサミちゃんのこと、襲うかもなー」 あつしくんが言った。 「やだぁー!あたし帰る!」 「ガハハハ、こんなんじゃ、酔っぱらわねーし、襲うなら、つぐみだよ」 (ぜひとも、そうしてください) 「もーー!!バカ!」 「あ、アサミちゃんのこと、川村が襲うかもな」 「あ、俺、原田さんに嫌われてるみたいだから、襲わなーーい」 (ほんと嫌い、コイツ) 「なんか聴こうよ、あつし、カセットテープどこ?」 「おー、だったらBOØWY聴こうぜ」 私はアイドルの曲しか聴かないから、バンド系の曲が新鮮に聴こえた。 (カッコいい、このバンド!) 「やっぱ、最高だよなー、BOØWY」 「年末にさ、コンサートあるらしいぜ、うちのとーちゃん、関係者からチケット取ってくれるってさ」 「あたし行きたい!」 「あたしも!」 「俺も行きてー」 「おーれーもー」 (え?え?この流れだとあたしも言わなきゃじゃん) 「あ、あたしも...」 「おっし、じゃー6枚な、とーちゃんに頼んどくな」 (やばい、好きでもないのに頼んじゃったよ) BOØWYの話から、学校の話になった。 「なぁ、知ってっか?サッカー部だった3年が、2年のマネージャー、腹ましたって」 (高田くん、知ってたんだ!) 「それ、あかりのことだよね」 アミも知ってた。 「あーりゃりゃ、やっちゃったねー、ちゃんとしねーからだよー、俺はちゃんとしてるよー」 (川村くん、ちゃんとしてるって...) 「森田もちゃんとしてるんだろ?」 川村くんが聞いてきた。 「まだだもん!まだ!そんなことしてないし!」 たぶん、顔が真っ赤っかだったと、思われる。 「冗談だよー、そんな真剣に答えなくてもいいのにー、アハハハハ」 (川村、ぶっ殺す!) 高田くんとアミの情報によると、あかりは産むらしく、高校は中退するそう。 彼が卒業するまで、お互いの家で暮らして、落ち着いたら籍を入れるらしい。 「やっぱさ、好きで付き合ってるけどさ、そこはちゃんとしなきゃいけーねんだよ、そんときの気持ちと欲求だけだと、そーゆー結果を招くんだよ」 (うわっ!あつしくん、見かけによらず凄く真面目なんだ) 「あ、それ、俺も、どうかーーーん」 (え?あんたも以外と真面目?川村くん?) なんだかお酒を飲んでるけど、男子は真面目な討論会になっていた。 熱く語ってた。 時計を見ると、深夜3時をまわっていた。 「女子は2階の俺の部屋で寝なよ、寝ないとニキビ出来っぞ」 「あつし達は?」 「俺達は、ここで、もう少し飲んでから、寝る」 「わかった、じゃ、おやすみ」 とは言いつつも、女子は朝まで語り明かした。 女子トークには終わりがないのだ。 この年頃は、やはり男は男同士、女も女同士で語りたいのである。 その場に彼氏彼女が居たとしても。 「もう6時だよ、結構喋ったね」 「ふあぁぁぁぁ....」 大きなあくびをした。 「下降りよっか、あつし達、たぶん寝てるよ、スターどっきり㊙️報告の寝起きドッキリしちゃおうよ!」 (あ!あの番組のしたかったんだよね~) 下に降りて行った。 案の定、3人とも寝ていた。 「くさっ!」 (男臭いのか、お酒臭いのか、わからない!) 「見て見て!アホヅラして、寝てる」 私達は笑いをこらえた。 「アミは高田くん、アサミは川村くんね、どんな起こし方でもいいから」 (やっぱそーなるよねー) 「じゃ、いくよー、せーの!」 つぐみは、あつしくんの鼻を摘まんだ。 「なんにすんだよー、つぐみ~」と言いながら、あつしくんはつぐみを抱き寄せた。 アミは、高田くんの脇腹をコチョコチョした。 「やめろよー!おめぇなにすんだよ、このやろー」と言いながら、高田くんはアミに同じことをした。 私は....川村くんの足を蹴った、手で触りたくなかったから。 「........」 (あれ?起きない) 今度は、腰の辺りを蹴ってみた。 その瞬間、グッと足を掴まれた。 「きゃっ!」 「つーかーまーえーたー」 (起きてやがった、コイツ!) バランスを崩して、川村くんに覆い被さるように倒れた。 「はーい、つーかーまーえーたーぁ」 思いっきり羽交締めにされてしまった。 「ちょっと!離してよ!!」 「そんな怒んないでよぉー、あー、重てぇー」 昨日の夜といい、今朝といい、森田くんにまだされていないことをされた。 ホントにムカつく。 でも、本当はドキドキが止まらなかった。 森田くんとは違う、ドキドキだった。 ドキドキしちゃいけないのに.... 「お邪魔しましたー」 「まーたーねー」 「またなー」 「またねー」 「あつし、あとで電話するね」 「おうっ、みんな気を付けてな」 初めての男女お泊まり会は、無事終了。 無事? いや、私は無事じゃなかった..... 変なモヤモヤ感が残っていた。 川村くんからされたことを、頭の中から消し去りたかった。 (森田くんに話せないことばっかり) 私は森田くんの彼女!森田くんが好き! 何回も何回も呪文のように、心で唱えていた....
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