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月日を経て――
ユルユル男の性事情はともかく、現在、不破の研究がバイオテクノロジーの分野でめざましい成果を上げているのは事実だ。
「もうさあ、若き天才のイケメン准教授なんて、モテる要素しかないと思わない。情報誌に取り上げられたとたん、不破君狙いの女たちの多い事、多い事。講演会を開けば、人気俳優のトークショー会場みたいになるんだから」
昨年末に行われた講演会がいかに凄かったかを、莉緒那は力説する。
「つまり、群がってくる女たちを片っ端から……って感じ?」
「当たらずも遠からずね。不破君なりの基準はあるみたいだけど」
「基準、ね」
食堂の席を立った泉は、研究室での会話を思い出す。
『六月になったら二人で行きましょう』
『デートに誘っています』
不破の言葉が、ただただ虚しく感じた。
「行くわけねーだろ。バーカ」
本人を目の前にして云えばよかったと後悔した。
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