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不破理人、28歳。
いわゆる天才という部類の人間だ。
最難関といわれる東帝大学に首席合格。
3回生在学中に大学院に飛び級し、修士課程から博士課程に飛び級し、二十五歳で博士号を取得した。
飛びっぱなしの天才は、すぐさま同大学の講師に採用され、あっという間に助手から准教授になった。
研究室に戻った泉は、こっそり不破の経歴を検索し、一読してすぐに消した。
「いるんだよねえ、こういうヤツ」
「何か云いましたか?」
泉のつぶやきに反応した不破が、パソコンから顔を上げる。
「いいえ、何も云ってませんが……ちょうど科学誌に寄稿する論文の英作が終わりました。遺伝子組み換えのデル……なんとか」
「デルフィニジン。青色遺伝子の組み換えについての論文です。シアニジンの抑制と青色色素デルフィニジンの蓄積に関する研究です」
「ああ、それです、それ」
説明されても、わからない。
「研究用語に不慣れなもので、確認をお願いします。共有ファイルにアップロードしておきます。閲覧パスワードはメールします」
「わかりました。ところで成瀬さん。青いバラはお好きですか」
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