第2章 大統領の演説

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パク(事実が分かるまではこの名前を使用することにする)は取りあえず、この見知らぬ看護婦の言うことを聞いておくことにした。 今現在がどういう状況か分からないが、味方と思われる人間が一人も見つかっていない以上、少し様子を見るほうが賢明なようだ。 どう行動するか、同発言するかも、その時々で、判断しようと思った。 彼女は扉を開けると、パクに出るように合図した。 しかし、その行為は、押しつけがましいわけではなく、やさしさを感じる動作なようだ。 パクは部屋を出て初めて状況がある程度、飲み込めてきた。 どうやらここは、精神病院のようだ。 パクの部屋は一番奥で、落ち着いた作りになっていたが、その他の部屋は、それほど整備されているようには見えなかった。 廊下に面している部屋は、すべて、鉄格子が、設置されている。 そして、部屋からは、叫び声や泣き声、不思議な笑い声なども、聞こえてくる。 パクがいた部屋で聞こえなかったのは、パクの部屋だけ防音施設が着いていたのであろう。 そのそれぞれの部屋から発せられている声はすべて、大きな声だった。 幾つかの部屋からは、手を出そうとしているのが見て取れた。 我々を見かけると声をかけてきたりもした。 白衣の彼女は、それに対し、やさしく対応していた。 パクは、なるべく目を合わせたくなかったが、何度か彼らと目が合った。 彼らはパクを見た瞬間、驚いているようにも見えた。 ただその目は、こちらの方向を見ているようで、遠くを見つめている目のようだった。 ここは、かなり重度の障害を持った患者専門のエリアなのだろう。 何故そう思ったかというと、それぞれの部屋はすべて、鍵が掛けられ、その上に、廊下の向こうにもう一つ頑丈そうな扉があったからだ。
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