第2章 大統領の演説

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彼女の眼差しが疑いに変わったような気がした。 パクは、冷静になろうと努力した。 しかし、その心とは裏腹に、彼は全く持って混乱状態に陥っていた。 分からないことが、多すぎる。 自分は一体何者なのか。 昨日まで気が触れていたということか? 自分で考えている自分自身大統領だと思うこの気持ちは、どこから来ているのか? そう言えば、大統領だとしても、その時の記憶がほとんどないようにも思えた。 そう、大統領だと思っているが、大統領としての、今までの記憶が全くないのだ。 なぜ、それなのに、パク・ミョンバクというこの名前は浮かぶのだろう? しかし、秘書のチェ・テウのことなども、記憶にあるのは確かだった。 これは、ただ単に、夢での話なのだろうか? それにしては、あまりに、リアルな夢の気がする。 しかし、現在の状況から判断すると、この病院で自分自身が、今まで大統領を演じていたようでもある。 この病院の中に、秘書のチェ・テウという人間もいるのだろうか。 既にパクは、自分の記憶に自信を持てなくなっていた。 しかしどうしても、自分自身が本当に、南韓民国大統領であるという気持ちを捨てることは出来なかった。
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