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「おめえは、なんかちがうかんじだ。
だいとおりゅうなんかでねえ。うそものだ。」
パクが、びっくりしているとその後ろにいた老女も
「ほんまだ、ちょっとちがおう、ちがおう。せんせいのかおとちごお。」
と叫び、指を差し出した。
その他の患者は、“何をいう大統領じゃないか”というようなことを言い出したが、広場は完全に二つのグループに別れてしまった。
とはいえ、我、関せずの人間が一番多かったのは確かだ。
パクは、ぎょっとした。
自分が実は気がふれていないということが、この患者達にまでばれてしまったかと感じた。
このことが、この病院の医者に知られれば命が危ないかも知れない。
しかし、よく考えるとプロの精神科医の前で、偽り続けるのも不可能だとは思えてきた。
さっきまでは、頭がふらふらしていたが、今では冷静にいろいろ考えられるようになっていた。
今の状況はまさにまずい。
正直に現在気がふれていないことを告げるべきか。
いや、もし、昨日まで本当に気がふれていたのであれば、それも良いだろう。
しかし、そうは思えない気持ちのほうが、相変わらず強かった。
そちらの方が真実だとすると、本当の大統領であるはずの自分がこのような囚われの状態である以上、場合によっては命を狙われるかもしれないのだ。
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