第5章 定期健診

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診察室は広かった。 診察室の後ろには診察に使うと思われるベットがあり、その横の壁には、神経科の専門書がびっしり詰まっていた。 そして、その横には小さなテレビがあり、音が漏れているところをみると、電源はオンになっているようだ。 どうやら討論会か何かを放送しているようだ。 精神科医の顔はというと、考えていたよりはずっと若く、短く刈った髪の毛は綺麗に七三に分けて、清潔そうな男であった。 四〇歳前後だろう。 ジュリと同じで、とてもパクを陥れようとしていうような感じには見えなかった。 しかし、パクは、第一印象だけで、信用してはだめだと自分に言い聞かせた。 清潔感あふれるこの医者は、にこりと微笑み掛けて、パクに声をかけてきた。 「これはこれは、ようこそお越し頂きました。どうですか、大統領。体調のほうは?」 パクは焦っていた。 看護婦であるジュリは今まで誤魔化せてきたかもしれないが、とても精神科医を騙し通せるものではないと思ったからだ。 脂汗が出てきた。 しかし、あまり時間を掛けるわけにもいかない。 取りあえず、様子をみてみる方法を考え、自信たっぷりなふりで声を出してみた。
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