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診察室は広かった。
診察室の後ろには診察に使うと思われるベットがあり、その横の壁には、神経科の専門書がびっしり詰まっていた。
そして、その横には小さなテレビがあり、音が漏れているところをみると、電源はオンになっているようだ。
どうやら討論会か何かを放送しているようだ。
精神科医の顔はというと、考えていたよりはずっと若く、短く刈った髪の毛は綺麗に七三に分けて、清潔そうな男であった。
四〇歳前後だろう。
ジュリと同じで、とてもパクを陥れようとしていうような感じには見えなかった。
しかし、パクは、第一印象だけで、信用してはだめだと自分に言い聞かせた。
清潔感あふれるこの医者は、にこりと微笑み掛けて、パクに声をかけてきた。
「これはこれは、ようこそお越し頂きました。どうですか、大統領。体調のほうは?」
パクは焦っていた。
看護婦であるジュリは今まで誤魔化せてきたかもしれないが、とても精神科医を騙し通せるものではないと思ったからだ。
脂汗が出てきた。
しかし、あまり時間を掛けるわけにもいかない。
取りあえず、様子をみてみる方法を考え、自信たっぷりなふりで声を出してみた。
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