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”なぜ、一瞬でも、自分自身のことを忘れそうになったのだろう。
私も年なのだろうか。
痴呆が始まったのだろうか。“
そうは考えても、正確な年齢を思い出すことは出来なかった。
”たぶん、まだ、五十代前半のはずだ。
そう、私は、今度の五月で、五十四歳になるはずだ。
しかし、なぜ記憶の方が後からやってくるのだろう。”
彼は、理解に苦しんだ。
しかし、記憶は徐々に蘇ってくる。
この記憶のこともそうだが、それよりも気になるのは、この自分自身の置かれている状況の方が心配になってきた。
彼は、蘇った記憶をたどっていった。
”昨日までの私は、あんなに激務をこなしてきていたはずだ。
それに、この部屋はいったいどこなのだ。
仮にも私は、南韓民国の大統領パク・ミョンバクだ。
第一秘書のチェ・テウは、どうしたのだ。”
この部屋はある程度綺麗に整頓はされているが、テレビもなければ、電話もない。
カーテンの裏の窓には、格子が掛かっているようだ。
入り口のドアには、窓もない。
あるのは、このゆったりとしたベッドと明かりが点いていない蛍光灯だけだ。
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