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恋するケダモノ
ここは色々な生物たちが共存する世界だ。
一番多い種族は人間族だが、この国の総理大臣は魚類のサバだったりする。
ちなみに、うちの会社の社長は鳥類のフクロウだ。中々恰幅が良いので、社長として木に留まっている姿は案外格好いい。
そして、オレの直属の上司は、トカゲだったりする。
そのトカゲを見下ろしながら、オレは苦言を呈していた。
「先輩、オレに教育係は早いんじゃ――」
「何言ってるんだ。お前も五年目だろう? そろそろ、こういう仕事も担当しないと」
「はぁ……」
明日から来る新卒相手に、どう接したらいいのだろうと考えると気が重い。
オレは、ハッキリ言って強面だ。
声も野太いし、ガタイもいいし、身長もある。
その所為か、どうも相手が委縮してしまうらしい。
婚活サイトに登録して真面目に結婚相手を探しても、一回会うと次回からは声が掛からない。つまり、婚活は連戦連敗中の、モテない歴更新中のオスだ。
しかしそれについては、言い訳ではないが他に理由もある。
オレはそもそも、メスの嫁探しにそれ程熱心ではないからだ。
婚活に熱心なのは、オレの両親の方。
あぁ、案外それはどこも同じか?
だが、実はもう一つ理由がある。
――――オレは、最初からメスに興味が無いんだ。
だから、あえて無理目の、種族からして違うメスを選んでアタックしては(わざと)玉砕を繰り返していた。
◇
翌日の、満員電車。
ギューギューだが、オレについては案外余裕だ。何せ、そこらの奴等よりも頭が一個分余裕で飛び出ているので、空気だって堂々吸える。
しかし人間族、やっぱり多いな。
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