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「あの時、希は瀕死の状態だった。そこで先生から聞いたんだけど、どうやら助かる方法が一つだけあるらしい。
それは身体の一部に電子チップを埋め込んで、人間の身体をコントロールする事だって。
勇気くん、シンギュラリティって聞いたことはあるかい?簡単に言うとね、テクノロジーというのは急速に進化し続ける。その中で人工知能”AI”が人間の知能を超える地点のことを、シンギュラリティと言うんだ。
アメリカのシリコンバレーを拠点にしている電気自動車のテスラも、その機能をフル活用している事で有名だね。
世界でもまだ誰もやったことのない電子チップを人間に埋め込むという手術。薬で言う所の治験。それを希の身体でやってみないか?と問われた。
もちろんこれを試さなければ、生存確率は10%以下。もし生存していたとしても、植物人間になる確率は90%と言われた。
でも誰も試したことのない、実験のようなものだから普通の人は試さない。だけど今回こうして希に機会は与えられた。
私には幸い、ある程度の未来は予測できるという能力がある。だから希の命が助かるのなら、やるしかないって思ったんだ。希にはこの先も生きていて欲しい。たとえ一部が機械になろうが構わないって」
一連の話を聞き終えた勇気は、ゴクリと唾を飲み込んだ。
喉が急激に乾いたのか、甘いカフェオレをごくごく飲み干した。
信二も一通り話を終えて、再びペットボトルの水に口をつける。
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