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勇気が心配そうに聞くと、信二はうんうんと満面の笑みでうなずいた。
「希は今でも元気にしているよ。今はちょっと事情があって、遠方に住んでいるんだけどね。でも国内にはいるから、会いたいと思えばいつでも会いに行ける」
信二は少し鎌をかけるように、希の居場所をやんわりと伝えてきた。決して本人が会いたいという訳ではなさそうだ。
「そうなんですね。僕はずっと前から彼女の事を気にかけていました。希ちゃんに会ったのは一度きりでしたが、初対面で強烈なイメージを持ってしまったんです。
彼女のぶっ飛んだキャラクターに呆気を取られた感じです。でもその日以来、二度と会うことはないんだろうと思ったのは事実です。
それなのに1日足りとも彼女の事を忘れたことはなかったです。具体的にイメージするのではなく、心の隅の方にちょこんと座っている座敷わらし的な存在です。
だからもし叶うのなら、もう1度会いたい。時が経つにつれて、僕の心はだんだんと変化していきました」
喉の渇きを潤おそうと、信二は勇気の話を聞きながらペットボトルの水をごくごくと飲み干した。
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