13.希ちゃんの真実。

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まだまだ聞きたいことはたくさんあったのだが、信二の話を聞いているうちに少しだけ心が和らいでいた。 それは信二のまっすぐな心が勇気に届いていたからだった。疑問があろうが何だろうが、希への愛が感じられる。 その事に勇気は素直に感動した。ここまで感動する事が今までの人生であっただろうか? 「ありがとうございます。僕に希ちゃんを会わせてくれて。僕は幼い頃からずっとつまらない人生を送ってきました。 人と話すことに何の意味があるのだろう?意味がないのなら、別に話をしなくてもいいんじゃないかって。だから周りからは距離を置かれていて、よくいじめられていました。 僕がいじめられている事は両親に言ってなかったのですが、家庭訪問の時に学校の先生が僕の母に学校でいじめられていたという事を初めて伝えたんです。それで母親はびっくりしていました。 その頃の僕は親に迷惑をかけたくなかった。僕の中だけで留めておけば、きっと気づかれないと思ったから。そんな日々を送っていた時に、目の前に希ちゃんが現れて。 それから僕の人生は希ちゃんの影響を受けまくっています。たった一度きり会っただけなのに、あんなに刺激的な体験は初めてのことでした」 勇気は今までの出来事を包み隠さずにすべてを吐き出した。 自分の中だけで留めていた事を他人に話す。 それは勇気にとって初めての体験だった。きっと信二の話を聞いているうちに触発されたのであろう。
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