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「これ、どうしたが?」
「貯めていたお小遣いで買ったんよ。ママに元気になって欲しくて」
満面の笑みを浮かべる亮とは対照的に、結子の瞳からは薄っすら涙が滲み出てくる。
「亮君、ありがとう……。半分こしよ?」
と、たい焼きをそっと受け取った。
「うん。あとね、僕はいつもママの味方やからね! パパが東京でお仕事中の時は、僕がママを守る! それから、僕は世界中でママが一番大好きやから」
愛おしい我が子の言葉にとうとう耐えきれなくなった結子の瞳からは、ポロポロと涙が零れ落ちてゆく。
それを息子に見せていけないと、目の前の小さな身体をそっと抱きしめた。
我が子が一生懸命伝えてくる言葉のぬくもりと、体温のぬくもりが、亡くなった祖母への悲しみをそっと、癒してくれる。
「……あったかいなぁ。……亮君。ありがとう……。私も、亮君のことが大好きやからね。ずっと、ママの傍におってな」
と、涙声で愛を伝える。
結子は我が子を強く優しく抱きしめ、天を仰いだ。
曇天に覆われていた青は、いつのまにか顔をだしていた。
雲の隙間からさす薄日が二人を照らし、陽の光だけが持つ、特別なぬくもりが二人をあたためてゆく。
それはまるで、天国にいるより子がそっと、愛する二人に微笑みかけているようだったーー。
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