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店の通りを歩いていた結子の姿を見つけた博が、「結子ちゃん、おかえり」と駆け寄る。
「ただいま戻りました。先程はありがとうございました」
深々と頭を下げる結子に、「そんな気にせんでええが」と肩を叩く。
「さぁ、かわいい息子君が店で待っとる。はよう行ってあげ」
「え?」
きょとんとする結子は博の肩越しに店内を見つめる。
ポップな半袖とズボンを身にまとい、青色のランドセルを背負う七歳程の男の子、『柳亮』が結子に向かって、勢いよく手を振っていた。
「亮君。いい子に育っとるな」
穏やかな笑みと共に小さく頷く博は、「じゃぁ、またな。いつでもきんさい」と、店内へと戻っていった。
博と入れ替わるように、「ママ―ッ!」と、小さな少年が結子の元へと全力疾走で駆け寄ってくる。
「りょ、亮君ッ! な、なんでココにおるが?」
思いもしない我が子の登場に驚く結子に対し、亮は答えを与えるでもなく、「ママ、お帰りなさい」と口にする。とてもマイペースだ。
「ぁ、えっと、ただいま」
結子は戸惑いながらも、亮と視線を合わせるように両ひざを折る。
「亮くん、どうしたが?」
「えへへ。今日のママ、朝から元気なかったじゃろ? だけ、コレを食べて元気だして欲しくて、買いにきたんよ」
と、ゆうぐれの印字が入った紙袋に小さな手を突っ込み、ガサガサと音を立てる。
「甘い物食べると、元気になる……はず!」
あったかいたい焼きを一つ取り出した亮は、はい! どーぞ。と嬉しそうに結子に手渡す。
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