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私のストレスの捌け口は、いつだって本の中にあった。
文字の羅列を目で追っているときだけならば、私は無限に自由なままだった。どこにも属せず、だれにも縛られず、何にも制限されなかった。
自称・父親だったあの男に朝晩関係なく殴られ続け、事実・母親だったあの女に理不尽な理由で罵られ続けた幼少期も、その二人から離された代わりに他称・私を保護してくださった心優しい遠い親戚の伯母にネグレクトまがいのことをされ続けた学生時代も、私は一人になればいつも本を読んでいた。
本というものは、ありがたいことにいろんなところで存在している。幼いころ親の目を盗んでは頻繁に家から逃げ出し、近所のスーパーマーケットのレジ裏にある本棚の絵本を繰り返し何度も読んだ。最初こそ店員に邪険に扱われたが、私の薄汚く傷だらけの見た目から何か察したのだろう、店長とやらが私がそこで本を読むことを許容し、それ以降は誰も何も言わないでくれた。伯母の家の隣は図書館だった。
もし、朝から晩まで無言で私を受け入れてくれたあのスーパーや図書館がなければ、私は確実に自ら死を選んでいただろう。私にとって本とは、それほどまでに崇高な存在だった。
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