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SIDE.米沢 佑理
【Act.01】
ショップの顔とも言える店先の、ガラス張りのショーケースの中。
春の柔らかい日差しを背中に受け、マネキンに、今年の春夏トレンドカラーであるペールトーンのピンクのパンプスを履かせる私は―― 米沢佑理―
総合アパレル企業【Refinelucy】の販売事業部に席を置き、会社の販売プランやコンセプトを各地域の実店舗に指示したり、店舗からの意見を会社に上げたりする、エリアマネージャーと言う調整役を担っている。
本日は、私の担当店舗の中でも、競合犇めく秋月市イチの規模と
オープンスペースが人気のショッピングモール【ベイサイドシティ・seaクルー】店のリニューアルオープンのお手伝い。
このリニューアルは、近年、他店との差別化を図る為、会社が力を入れているセレクトショップに生まれ変わると言うもの。
何事も最初が肝心だし、オープン前の慌ただしさは、店長経験者から言わせて貰えば、猫の手も孫の手も借りたいほど、どんなに人が居ても足りないと思っちゃうほど、目まぐるしい。
なので、実動隊である店舗スタッフが、商品の搬入や整理に忙しいと思い、本社から預かって来たショーケースのスタイリングをかって出た。
でも、本当は、そんなバタバタとした喧騒に巻かれて、神経を張って無きゃすぐに気分がオチちゃうし、何より……身体を動かしている方が余計な事、考えなくても済むから……有難いんだ。
だって、学生の頃の失恋は、友達に愚痴ったり、泣きたいだけ泣いて暮せば、いつしか思い出に変わってた。
けれど、社会人になってからは、友達に愚痴る時間も無く、泣くと次の日に響くからと泣きたい時には泣けず、そして、悲しい顔なんてしてられない現実があるから……。
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