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「してるよ。ずっと気になってた。だから私と同じなのかなって思ってた」
僕はふーっと息を吐くと、明るい大きな音がホーム内で流れる。僕たちは上を見上げて、アナウンスを聞いた。電車の遅延についてのアナウンスだった。これには周りから溜息を吐く音がいくつも聞こえてくる。
「遅延か、珍しいね」
「そうだな」
僕たちの間では沈黙が漂い、今までの会話のテンポからしてどこか違和感を覚えた。仕方なく、僕は口を開く。
「僕は、この世界が嫌いだ」
彼女はこちらを見ると、真剣な面持ちで僕の話に耳を傾ける。
「僕は、青木さんが言うようにこの世界が嫌いだ。死ぬべき人間が死なないで、死なないでいい人間が死ぬ。そんな世界が嫌いだ。だって可笑しいに決まってる。どうして罰せられるべき人間が生きて、潔白な人間が死なないといけないのか。この世には多くの死ぬべき人間がいるじゃないか。刑務所にうじゃうじゃと殺人鬼やら詐欺師やらがいるじゃないか。どうして奴らを刑務所に残して、すぐに殺さないんだ。どうして生かすんだ。終身刑などにしないで、死刑にでもすればいいじゃないか」
僕は周りに人がいるため小声で言うと、彼女が静かに頷く。僕は続ける。
「僕は法律は分からない。誰がどれくらいの刑罰で済むのかも分からない。ただ一つ言えるのは、この世界は可笑しい。殺人鬼を捕まえて、数十年経ったら外に出してしまう。人数によって罰の重さは変わるけど、ここ日本は滅多に死刑執行をしない。終身刑にしてしまう。人を殺す、という残虐な行いを避けたいのは分かる。けれど、遺族はそれでいいのか? 殺されたのに、そいつを寿命が尽きるまで生かせていいのか? 許せないに決まってる。殺人鬼を殺しても遺族の傷は癒えない。死んだ人間は蘇らない。だったら寿命が尽きるまで生かすより、さっさと殺してしまった方が僕は良いと思う」
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