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#3
図書室の匂いが好きだ。本の匂いが充満している。図書室にいると、心が落ち着く。一種のセラピーなのかもしれない。
僕は気になった本に手を伸ばすと、数ページ捲る。近くから誰かの足音が聞こえたが、そんなことに気にも留めず僕は本を読み進めた。
「神様は酷いよ。死にたいのに死なせてくれない」
彼女は僕の後ろに立つと、一冊の本を手にする。ページをパラパラと捲って、それからすぐに元の場所に仕舞った。僕は彼女を無視して、本を読み進めると彼女がもう一冊手にする。それもまたパラパラとページを捲って、閉じてしまった。
「私前世で何かしたかなぁ……」
彼女は僕の隣にやって来ると、また新たな本を取った。この間僕が読んでいた本だ。それをパラパラ捲ると、しばらく読み進める。
僕はちらっと彼女を見ると、本を閉じて元の位置に戻した。
「自殺は、罪に問われるからじゃないか?」
「やっと喋った」
彼女は顔を明るくさせると、本を閉じて元の位置に戻す。僕は新たに気になったタイトルの本を取ると、ページを開いた。彼女もまた、新たに本を取るとページを捲る。
彼女、青木芽郁は若者の間で流行っているエイプリルフール病を患っている死にたがりだ。エイプリルフール病とは、死にたい人間が死ねなくなる矛盾の病である。医療界では起源を調査しているが、未だ解明されていない。そのことから「未知の病」と言われているこの病気を、信じている人間は僅かしかいなかった。
僕も最近まで全く信じていなかったが、彼女によって信じざる負えなくなった。そしてそれを切っ掛けに、彼女はちょくちょく僕に話しかけてくるようになった。
「罪って?」
「キリスト教では、自殺は罪として扱われている」
「へー、そうなんだ」
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