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僕ははぁと息を吐くと、彼女が「溜息吐かない」と注意する。相当ご立腹のようだ。確かに、集中して話を聞かなかった僕が悪いのだが。
「カラオケは? カラオケなら個室だし、誰かに見られる心配無いんじゃない?」
「却下。カラオケは僕たち世代がうじゃうじゃいるじゃないか。必ず誰かと会うに決まってる」
「じゃあボウリング!」
「却下。それもカラオケと同じだ。というかどれも友達と遊びに行くようなことじゃないか。本当にやりたい5つのコトなのか? そういうのって、世界一周とか規模がデカいものじゃないのか?」
「あはは、そんな規模が大きなものをしても意味ないじゃない。だって私はこの世界が嫌いだから死にたいのよ? この世界の普通の生活での喜びを知らないと、生きたいだなんて思わないわ」
僕はその言葉に思わず納得してしまうと、彼女が得意げな笑みを浮かべる。だがすぐ彼女は難しそうな表情を浮かべると、背もたれに体重を預け天井を仰いだ。
「全部却下なのね」
「そもそも僕は協力するとは一言も言っていない」
僕は彼女から本を奪うと、彼女は「あっ」と言ってまた唇を尖らせる。
「壱君が思考変えたらって言ったんだよ? だからこうやって努力してるんじゃない。それなのに壱君は協力してくれないんだー。へー、そうなんだー。へー」
彼女はいかがわしい目で僕を見ると、僕は眉をピクリと動かして「何だよ」と言う。彼女は僕から顔を背けると、立ち上がってまた壁に寄りかかった。
僕はモヤモヤしながらも本を開くと、本を読もうとする。だが本の中身は全く頭に入ってこず、ただただ後ろにいる彼女の存在が鬱陶しいぐらいに気になって仕方がなかった。僕は彼女に顔を向けるか、否かを心の中で葛藤しながらページを捲っては行ったり来たりする。
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