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#4
彼女が交通事故に遭って死んだことが知らされたのは、約束の日の翌日だった。学校で暗い表情を浮かべながらやって来た先生が、僕たちに静かに告げた。
最初は誰もが信じなかった。でも先生が何も言わないのを見て、嘘ではないことを悟った。この後の出来事は言わなくても分かるだろう。女子は涙を流し、男子は他の奴らと顔を見合わせて、それから目をキョロキョロさせる。仲が良かった男子は涙を流していたりもした。
僕は、信じていなかった。どうせ嘘なのだと。だってエイプリルフール病の彼女が死ぬはずがない。だって彼女は死にたがりなのだから。矛盾の病で死ねないはずだ。
それなのにどうして電話に出ない。どうして既読がつかない。どうして、僕の前に現れないんだ。
彼女のお通夜には沢山の人が参列した。クラスメイト、先輩、先生、ご近所さん、親族、家族。僕も参列した。他の奴らが涙を流す中、僕は彼女の遺影を見ても涙が出なかった。
弔辞では誰もが涙を流したのに、僕だけは涙を流さなかった。彼女が入った棺桶が車に乗る場面でも、他の奴らが涙を流す中、僕だけは涙を流さなかった。
強がりじゃない。涙が流せなかったのだ。
これには自分もビックリした。初めて身近な人間が亡くなって、衝撃のあまり涙が出なかったのか。いや、違う。そうじゃない。悲しくなかったのか。いや、それも違う。では何故僕は涙を流せないのだろう。それは僕にも分からなかった。
他の奴らが悲しみに暮れながら帰る中、僕は一人会場に残って彼女の遺影を眺めていた。眩しいぐらいの笑みを浮かべた彼女。昨日まであれほど鬱陶しいぐらいに話しかけてきた彼女が、もういない。
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