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彼女のお母さんはこくりと頷くと「ちょっと待っててね」と言って、会場から立ち去る。しばらくしてから一冊のノートを持って戻ってくると、僕に渡した。「日記」と彼女が書いた文字を見て、僕は思わず手に取ってしまう。
「これ……」
「これを読んで、芽郁がエイプリルフール病であることを私たち以外の誰かに言ったことを知ったの。貴方のことが、沢山書かれているわ」
僕はしばらく日記の表紙を見つめて、それから彼女の母親に向き直った。
「開けても、いいですか?」
「ええ」
僕は彼女の日記を開けると、数年前からつけられている日記を一つ一つ読んで行く。日記には彼女が楽しく中学生活を過ごしている記録が載っていた。だがそれも最初まで。事は彼女の親友が自殺してから、大きく変わっていった。文字も荒々しくなっている。
○月×日
麗子をイジメてた子たちが分かった。何で麗子をイジメたの? 麗子は何もしてないのに、本当に信じられない。麗子が自殺しても、あいつらは反省する素振りも見せない。楽しそうに笑って、普通に生きてる。神様は不平等だ。なんで麗子が死んで、あいつらが死なないの? あいつらなんか、死ねばいいのに。
○月×日
死にたい。もうしんどい。嫌だ。自分が自分じゃないみたいで怖い。気を抜けば、あいつらを殺してしまいそうになりそうで怖い。麗子の所に行きたい。もう、死のう。
○月×日
死ねなかった。手首を切ったはずなのに、傷がつかない。どうして? 何度も何度も切ったのに、傷口が見当たらない。ちゃんと切ったはずなのに。もしかしてエイプリルフール病? 本当に実在したの? まさかね。
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