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ああ、そうか。どうして僕は気づかなかったのだろう。いや、本当は気づかないフリをしていたのだ。ずっと。彼女への思いを、僕は自分に嘘を吐いてまで隠していた。
「僕は、芽郁さんが好きなので」
刹那、流せなかった涙がポロポロと零れ落ちた。嘘を吐かずに過ごした彼女との日々に、一つだけ混ざっていた嘘。それを今嘘であると認めた瞬間、涙が止まらなかった。ずっと堪えてきた涙が体の奥から押し出されるように、瞳から零れ落ちる。
「すみません、辛いのはお二人なのに、僕なんかが泣いて……」
彼女の母親は首を横に振ると、優しく僕を抱きしめてくれた。彼女の父親も抱きしめると、その温もりにさらに目が潤む。
エイプリルフール病は矛盾の病。死にたいと思えば、死ねなくなる。
生きたいと思えば、死ねるようになる。そんな病だ。
彼女は、僕と出会うために神様が彼女を死ねない体にしたと言ったが、僕はそうは思わない。確かにその方が聞こえが良いかもしれないし、僕もそうだと信じたい。でも無理だった。
彼女を奪ったこの世界に対して、そんなハッピーな感情を持つことができなかった。
僕はこの世界が嫌いだ。矛盾しているこの世界が、死ななくていい人が死んでしまう。彼女が死んでしまう、この世界が嫌いだ。
それはきっと、これからも。永遠に変わらない。
でも僕は生きる。彼女の為にも。それが僕の生きる意味だ。
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