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麗美は学校生活にも上手く馴染めずに不登校になり、家で引きこもる生活を続けていた。
引きこもってほぼ1日中ラジオを聴くようになった。視聴者参加型のラジオ番組でリスナーのみんなの投稿が面白くて自分でも投稿をするようになって読まれたりもした。
登校はできないけど投稿は頑張ってるなんてコメントがDJさんにウケて、だけど励まされたりもした。
投稿してくるリスナーさんはみんな仕事や学校を頑張っている人ばかりだ。そう思うと自分が情けなくなってきた。
決して裕福な家庭じゃないのに不登校の学校の学費を払わせて、ちゃんと就職もしないでお荷物になっている自分とはさよならしたいと決心した。
どうせ行かないんだから学校は退学することにした。いつまでも家族のお荷物でいるワケにはいかないからせめてバイトでもしようと街に出てみた。
元々お花が好きだからお花のお店で働いてみたいなとお花屋さんを何軒か回ってみたら咲愛(さきあ)さんというお姉さんが拾ってくれた。若くしてバツイチで小さな子供も抱えて頑張っているんで手伝ってくれる人を探しているのになかなか見つからなくて困っていたみたい。
引きこもっていたのに、あちこちのお花屋さんを回って雇ってもらえるなんて大きな進歩だし、大きな花を咲かせたと自分を褒めてあげたい気分にもなった。
咲愛さんは仕事には厳しいけど、色々教えてくれるし、面倒も見てくれて、ちょっと歳の離れたお姉ちゃんみたいに思っていた。本当はママみたいだと思ったんだけど、怒られたからお姉ちゃんってことでwww.
咲愛さんが応援してくれたから運転免許も取ることができた。運転という新たな特技が咲いた。
まだみんなが高校生の時から運転できるなんてスゴくないと天にも昇る気持ちだった。
運転ができるようになったんで配達も任されるようになった。花屋さんというのは配達こそ大きな仕事なんで、麗美が配達できるようになって収益力もアップして咲愛さんも喜んでくれた。
気合が入った花束やフラワーアレンジメントの注文を受けたので気合を入れて作って配達に行った現場が運命の出会いのライブハウス『ロザリオ』だった。
『グルビーズ』というアイドルグループの赤色リーダーシュリさんの生誕ライブの現場で、花束やフラワーアレンジメントはファンクラブの赤色担当、シュリさん推しの人たちからのプレゼントだった。
アイドルさんのライブ現場って見たことないけど、アイドルさんの歌にみんなが元気をもらって、また、みんなの応援がアイドルさんも力をもらって、お互いに与え合って支え合っているという関係がスゴく楽しそうで心惹かれた。
引きこもっていて友だちもいなかったけど、現場には友だち、仲間・・いやいや、同志とも言うべき絆があった。
それにちょっと聞いただけだけどグルビーズの歌はスゴくいい歌だと思った。
配達や飾り付けをした時は仕事だし、入場料も払ってないからチラっと見ただけだったけど、また見てみたいと思った。
バイトで使ってくれたのに正社員扱いにしてくれたから、親に払ってもらうのはやめて自分で払うようにしたスマホで検索してグルビーズを調べてみた。
歌を歌ったりして県内各地のB級グルメや名物をPRする活動をしているユニットだからグルビーズって名前で7人で活動していたけど卒業や脱退があって今は5人。
ライブハウスやイベント、お祭りでステージをやっているので、仕事帰りや休日など都合が合う時にはライブに行くようになった。
振りコピやオタ芸ダンスも覚えて応援していると、段々とオタクの中でも目立つ存在になってきて、現場だけの友だちもできた。職業とか私生活には一切干渉しない現場だけの関係だけど熱い絆で結ばれている、そんな関係が妙に心地良かったり。
曲の歌詞に合わせた振りをしたらグルビーズがそれを気に入って振りに取り入れてくれたこともあった。
引きこもりだった自分がこんなに積極的に活動をするようになるなんて、こんな花を咲かせるなんて思いもしなかった。
思い切って咲愛さんにもグルビーズを教えてあげたら娘さん共々気に入ってくれて一緒に現場に行くようにもなった。
あるライブでチェキを撮りに行くとリーダーのシュリさんから話があるから物販終わったら裏に来て欲しいと言われた。
何か失礼なことでもしでかしたかなとか、ファンクラブの勧誘かなとか考えてドキドキした。グルビーズのことは大好きだけど、ファンクラブに入って遠征とか色々する程おカネや時間に余裕はないと断らなければならないことを思うと申し訳ない気持ちでドキドキしていた。
「ごめんね、こんな所で待たせちゃって」
物販特典会が終わってシュリさんや他のメンバーたちが裏の控え室に戻ってきた。
「レミちゃん・・今日来てもらったのは折り入ってお願いしたかったからなんだけど・・とりあえずは研修生からって形になるんだけど、グルビーズのメンバーになってもらえないかな?」
リーダーのシュリさんが頭を下げるのと同時に運営代表のクミさんもやってきて同じことを言って頭を下げた。
クミさんは昔はTVにも出るアイドルグループのメンバーだったこともあって、引退後は芸能会社の代表となってグルビーズや他のアイドルの運営をしている他、弾き語りとかも現役で行っているスゴい人だ。
まさかのアイドル勧誘に麗美はびっくりした。引きこもりの自分に人前に立ってアイドルなんてできるワケがないと断った。
しかし、シュリさんは自分も元引きこもりだったと驚きの事実をカミングアウトしてくれた。クミさんに出会って、まさか自分がなれるワケがないと思っていたアイドル、しかもリーダーという花を咲かせてもらったんだと嬉しそうに話してくれた。シュリさんも今の麗美のように、クミさんが現役の時のオタクで、いつも最前で最高の応援をしてくれる輝きをクミさんに見初められたらしい。
クミさんが一線を引いて運営に徹する決心をしたのはシュリさんがいてくれたからとのことだ。
いつも最前で最高の応援をしてくれる麗美をシュリさんが認めてくれたのはまるで歴史を繰り返すようだ。もう引きこもりなんかじゃなく、現場の雰囲気を変える大きな花を咲かせたとシュリさんは言ってくれた。
とりあえず、仕事もあるから咲愛さんに相談してみたら、咲愛さんはメチャ喜んでくれて、きっとステキなアイドルさんになれるからやれるとこまでやってみろと応援してくれた。
芸名は本名のままのレミで、麗美は研修生としてグルビーズに加入した。自分がアイドルになるなんて夢にも思わなかったけど、やるからにはがむしゃらに頑張った。
シュリさんは厳しいところもあるけれど大きな愛でメンバーを包んでくれる、そんなリーダーだった。
レミが加入して1年が経つ頃にシュリさんは重大な発表をした。グルビーズを卒業してクミさんのような運営の人間になるというのだ。
そして、同時にレミの正式メンバーへの昇格が決定されたのだが、さらに衝撃の発表があった。
「赤色はレミ、あなたに渡すわ。これからはレミがリーダーよ。グルビーズを頼むわね」
レミは正式メンバーになったばかりなのにリーダーなんてムリだと断ったのだけどシュリさんも他のメンバーもレミがリーダーになることを祝福してくれた。
レミはいつもがむしゃらに頑張って、いつの間にかメンバーの背中を押してくれたりして頼りになる存在になっていたのだ。
シュリさんはレミのおかげでグルビーズはいくつもの大きな花を咲かせることができたと言ってくれた。
シュリさんの想い、メンバーのみんなの想い、応援してくれるファンの皆さんの想いを受け止めてレミは頑張ってリーダーとしてグルビーズに大きな花を咲かせ続けた。
メンバーの卒業や脱退があり、メンバーはどんどん変わって名前はグルビーズでもレミが加入した頃とは違うアイドルになっていったけど、レミは大きな愛でメンバーをまとめあげて大きな花を咲かせ続けて、代表のクミさんからはまるでシュリさんみたいだと言われた。
レミがリーダーとして走り続けてもう10年が経とうとしていた。
グルビーズはテレビやラジオにも出演したり、ワンマンライブでは大ホールを埋め尽くす程の一大アイドルに成長していた。
レミはグルビーズを卒業することを決意した。
一番新しくメンバー入りした研修生のヒカルがもうレミがいなくても大丈夫なぐらいに成長してくれたのが決心を固めるのに背中を押してくれた。いつも元気いっぱい、全力少女のヒカルに赤色は任せよう。
そしてセンターで緑担当のミコの存在も大きかった。ミコは前にも他のアイドルグループにいたことがあって鳴り物入りで入ってきたのに、最初は何だコイツはと思った。常識とかは全然なっていないし、思い上がって態度だけはデカいし・・。
しかしミコは誰よりもがむしゃらなガッツの持ち主だった。レミが厳しくしたら最初はぶつかったが、絶対に認めてもらえるようになってやると啖呵を切ったとおりに、驚く程短期間にまるで別人のように自他共に認める大きなアイドルに成長して、センターの座に輝き、レミにとっても一番頼りにできる背中を預けられる存在になっていた。
何も赤色がリーダーじゃなければならないという決まりはない。新しいリーダーは安心してミコに任せよう。
ミコにリーダーを任せると伝えたら最初に会った頃のことを思い出してバツが悪そうに笑った。そして「とんだ勘違いヤロウだった自分にこんなに大きな花を咲かせてくれてありがとうございました」と涙を流してレミと抱き合った。
これで安心してグルビーズは新リーダー、そして新世代に任せることができる。
10年、アラサー、アイドルとしては限界だと思う。今の現役のメンバーにもやがてそういう歳はくる。
元アイドルの人たちに大人になっても花を咲かせる姿を見せて希望になるためにレミはシュリさんやクミさんのように運営の側の人間になった。そして早速グルビーズの妹分のアイドルユニットも立ち上げた。
「お疲れ様。大きな花をいっぱい咲かせたね」と咲愛さんが笑顔でグルビーズを卒業したレミを迎えてくれた。
花屋さん兼運営ということで咲愛さんと一緒に働いていくことにした。さらにすっかり大きくなった咲愛さんの娘さんをグルビーズの妹分として立ち上げたアイドルユニットのメンバーに迎えた。
「これからも大きな花を咲かせていきましょうね。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくね」
レミと咲愛は満面の笑顔で乾杯をした。
みんな、レミだよ。
引きこもりだったレミがアイドルグループのリーダーになっちゃったように、ツラいことも多い人生だけど負けないで頑張り続ければきっと花を咲かせることはできるからね。
ステキな自分なりの花をいっぱい咲かせてね~(^^)
レミもまだまだいっぱい花を咲かせていくからね~(^^)バイバイ👋
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