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あずさ、早苗、結衣、まりあの四人は、学部もゼミも一緒。四年間の大学生活の大半を四人で過ごし、卒業旅行も四人一緒にシンガポールに行くことに。
卒業旅行の一日目はほぼ飛行機の移動で終わり、二日目は朝からはりきって市内観光をすることにした。
四人はしばらく観光を楽しんでいたが、少し寂れたところに、テントのようなものがあることにまりあが気づく。
「ねぇねぇ、絆を試す部屋だって。面白そうじゃない?」
「こんなのガイドブックに載ってなかったよね?」
「新しく出来たんじゃない? お金もかからないみたいだし、とりあえず入ってみようよ」
結衣は観光ガイドには載っていなかった絆の部屋とやらを不思議に思ったようだが、三人が乗り気だったこともあり、テントの中に入ることにした。
テントの中に入ると、中は十畳ぐらいの広さだったが、上半身がライオンで下半身が魚のマーライオンの像があるだけで、その他には何も置かれてなかった。
「マーライオンがあるだけだね〜」
「こんなところで、どうやって絆を試すって言うの?」
「何もないし、もう出よっか」
しばらく薄暗い部屋にいても何も起きず、そこを出ようということで意見が一致し、あずさを先頭にテントの出口に近づく。
「きゃあっ!」
「どうしたの!? あずさ、大丈夫?」
テントを出ようとして、いきなり大声を上げて尻もちをついたあずさの後ろにいた結衣が彼女に声をかける。
「う、うん。なんか、出れないみたいで……」
「え?」
戸惑いながらもそう言ったあずさに他の三人は目を丸くするが、結衣は慎重に出口の方に手を伸ばしてみた。
「……本当だね。壁みたいなものがある」
結衣に続いて、まりあと早苗も手を伸ばすと、たしかに壁のようなものがあり、向こう側に行くことが出来ないようになっている。
「でも、何で? 私たちここから来たはずだよね?」
行きは壁なんかなかったはずなのに、帰りは壁のようなものがある。どうしてこんな現象が起きたのか。
早苗の疑問に答えられる者は、誰もいなかった。
「ねえ、これってここから出られないってこと?」
「ん〜……あ、もしかして、これが絆を試す部屋ってことなんじゃない? 何か仕掛けがあるとか」
不安そうなあずさに、まりあが脳天気なことを言う。
「何か仕掛けがあるか探してみようか」
仕掛けがあるのかは分からないが、どのみちこのままでは外に出ることが出来ない。結衣がそう提案した途端、薄暗かったテントの中がいきなり真っ暗になり、マーライオンの像がピカピカと光り出した。
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