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「誰が嘘つきなのか決めろって言われても、どうやって決めるの?」
「話し合い……? でも、どうやって?」
「みんなから嘘つき認定されたら、ここに永遠に閉じ込められるんだよね? そんなの嫌だよ……!」
「自分が出られないのも嫌だけど、この中の誰かを置いていくのも嫌だよ」
早苗の言葉を皮切りに、まりあやあずさも不安を口にする。結衣だけは、何かを考えているのか一人黙っていた。
「君たちの選択は、尊重します。
話し合いでも、勘でも構いませんし、嘘つきが名乗り出ても構いません。
ただし、嘘つきを全員で指名できるのは一度だけです。選択は、慎重にお願いします」
動揺するまりあたちに追い打ちをかけるように、マーライオンが淡々とルールを説明する。
名乗りでても構わない。
マーライオンからそう告げられた瞬間、思うところがあったのか、四人全員……いつも冷静な結衣までもが少なからず焦りを見せた。
嘘つきとは、どの程度の嘘をつけば、そう呼ばれるのだろうか。小さな嘘や相手のためを思ってついた嘘でも、嘘つきと呼ばれるのだろうか。
早苗と結衣はバイト先が同じだが、早苗はどうしてもバイトに行きたくなかった時に「体調が悪い」と嘘をついて結衣にシフトを代わってもらったことが二度ほどある。
結衣は、本当はかなり早い段階で大手企業に内定をもらっていたが、他の三人が中々内定をもらえず苦しんでいる時に「大手に内定をもらった」と告げることが出来ず、「決まっていない」と嘘をついていた。
あずさは怖がりだけど、ホラー映画が大好き。しかし、「あずさはホラーが苦手」と思い込んでいる三人に本当のことを打ち明けることが出来ず、ホラーが苦手な振りをして四年間を過ごしてしまった。
早苗は同じゼミだった川越という一つ年上の男性が好きだったが、まりあから「川越先輩は彼女がいる」と聞いたため、告白することを諦めた。しかし、それは密かに川越を好きだったまりあの嘘で、本当は当時川越には彼女はいなかったのである。
どうでもいい小さな嘘から、わりと重大な嘘まであるが、つまり四人全員が友人に対して嘘をついていた。
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