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結衣の言葉に思うところがあった三人は、これまでの自分の行いを省みる。
嘘をつかずに生きていければ、それは一番良いことなのかもしれない。
しかし、一度も嘘をついたことがない人間などいるのだろうか。
つい出来心で。
相手のためを思って。
自己保身のために。
嘘をつく理由は様々だろうが、きっと一度ぐらいは誰しも嘘をついたことがあるだろう。まあ生きていく中では嘘をつく誘惑が多いからといって、嘘をついて良いことにはならないだろうが……。
「あのね、早苗に謝らないといけないことがあるの。川越先輩のことなんだけど、」
「彼女いなかったんでしょ? 今さら謝らなくていいよ。もう時効だって」
まりあは覚悟を決めて重たい口を開いたが、あっけらかんとした早苗に謝罪を遮られる。
「え? 知ってたの?」
「まりあには諦めるって言ったけど、やっぱり諦められなくてダメ元で告白したんだよね。その時に聞いたの。タイプじゃないからって、結局フラれたけどね。まりあもフラれたんでしょ?」
「ええ……、それも知ってたの?」
「うん、まりあも川越先輩のことが好きなのはなんとなく気づいてたし。先越されないように抜け駆けしたけど、フラれて良かったよ。
だって、もしどっちかが川越先輩の彼女になってたら、私たち友だちじゃいられなくなってたかもしれないし」
「……うん、そうだね。
今は私たち二人とも川越先輩よりもかっこいい彼氏が出来たし、あの時フッてくれた川越先輩に感謝だね」
「なんか川越先輩ちょっとかわいそう」
これまで早苗とまりあの告白大会を見守っていたあずさがぽつりとつぶやいた一言により、その場はどっと笑いに包まれる。
四人みんなで笑い合いながら、彼女たちは気を取り直し、再びシンガポール市内観光へと繰り出した。
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